2019/05/16

スピリチュアルウォーク −鎌倉七口 その六−

ようやく陽気が戻ってきたいち日、鶴岡八幡宮から北鎌倉へとぬける巨福呂坂(こぶくろざか)洞門界わいにある二つのスピリチュアルスポットを歩きまわった。今宮と青梅聖天社。
鶴岡八幡宮の裏手にある今宮は新宮神社ともいい、社のそばの立て札によれば鎌倉幕府に反旗を翻した後鳥羽上皇と二人の息子、土御門天皇と順徳天皇、三人のやんごとなきお方が祭神。幕府に敗れて流刑にされた三人の天皇の怨霊を鎮めるために建立されたそう。訪れる人とてほとんどなく、静寂な木立に包まれていた。鶴岡八幡宮の手厚い管理が行き届いてはいるのだが、社がコンクリート造りというのが場にそぐわない。強烈な怨霊をコンクリートに閉じ込めたのか、とも思ったりした。それでも一種異な空気が感じられたのは不肖佐助庵の単なる思い過ごしとも思えない。

北鎌倉へぬける幹線道路、巨福呂坂洞門とほぼ並行する、かつて巨福呂坂切通へと続いた坂道の峠の手前にある青梅聖天社(おうめしょうてんしゃ)。ご本尊は双身歓喜天。路傍にある案内板をみると男神と女神が相対して抱き合っているというめずらしい秘仏。ホッホー……これはぜひとも拝見せずばなるまいと草ぼうぼうの石段を上り、お参りしたかったのだが残念ながら無人の神社ゆえお目もじはかなわなかった。歓喜天を祀る本殿はもう何週間も人が訪れた気配もなく、鬱蒼とした草いきれにつつまれていていわく言いがたい空気が漂っていた。

猿田彦大神や大国主大神、庚申塔などと彫られた石碑や石仏が並ぶ切通へ続いている聖天坂をさらにぐーたらと上っていったら民家の私有地に突き当たってしまった。あたりにけもの道らしき気配もなくその先へ通りぬけてゆくことさえできない。ウロウロしながらふと崖の下をのぞいたら車の流れが絶えない巨福呂坂洞門が真下に見えた。
かつてたくさんの人の往来があっただろう巨福呂坂切通の面影を残すのはもはや緑なす草木に埋もれた青梅聖天社と石碑、道祖神だけになってしまったようだった。

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巨福呂坂界わい https://www.amazon.co.jp/photos/share/LzXL90LS2ngM16Lz0iwnjt7kjDg7lv7gkrcYROxp84E