駐車場に福島ナンバーの小型車が二台並んでいます。到底スキーを楽しみに来たとはおもえない作業用の小型車です。ロビーに入ると囲炉裏では二組の子供連れの若い夫婦がくつろいでいます。「あ、家族旅行か、楽しそうだな…」とおもって様子をうかがっていたのです。ですがその家族は快晴の朝になってもスキーに出かける素振りさえなく、こちらが取材から帰ってきたときもスキーを楽しんだ様子も見当たりません。
聞けば福島原発の放射能汚染から避難してきた家族なのでした。スキー場の宿泊施設に分散しての避難です。とりあえず住むところは無事だった。が、大気が汚染されているためそこで生活してゆくことはできない。仕事をすることもできない。なにげない家族団らんの風景。けれども、何かしなければならないのに、なにもしないで一日を送らねばならない若夫婦の不安と苦悩はいかばかりなんだろう。ここでもまた、現実を目のあたりにしながら、なにも手助けさえすることのできない無力な自分がいたのでした。
寒い日と暖かい日が一進一退でせめぎあっています。
庭先でいつの間にかラッパ水仙が風に揺らいでいる。
春はこれからです。